RUM DANCE HALL

イチロウ

2011年12月21日 03:12



どうしても伝えたいことがあって、

深夜に足を運んだ『R』は思った通り大変な混雑だっけど、

かろうじて1席だけ空いていたカウンター席に腰を下ろした私に、

『R』の店主は、

挨拶もしないだろう、

くらいのことは、

あらかじめ判っていたし、

店の混雑が収束するまでの数時間、

誰からも同情されない風情で、

このカウンターに居座る術くらいは心得ていて、

無言のまま、

『嫌々』といった感じで手渡された、

おしぼり代わりの日本手拭いの温かさも、

いつもと同じだし、

泥酔してしまった女のために呼ばれた、

タクシーの運転手がドアをノックするのも、

顔見知りの常連たちとの挨拶も、

すべてが既視感をともなっていて、

後ろを通り過ぎる無言のままの店主が、

私の身体にかなり乱暴な『一撃』を喰らわせてくるのも、

客が少なくなってくれば、

聞えよがしに店主が私の噂話を始めることすら、

あらかじめ予想ができたくらいで、

店内に残された客が数名になってくる、

あるのか無いのかわからない『閉店時間』あたりに、

流される曲が、









Tom WaitsでもNeil Youngでもなく、

Cassandra Wilson の

『Harvest Moon』 だということさえ、

わかっていたのだけど、







ただ一つ意外だったのは、例の


『だって僕は君が好きで、踊る君が好きで.....』


の歌詞のところで、

不意に涙が溢れてしまったことだけ。







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